驚くべき発明や発見を集めた「THE BOOK」の中身を、少しだけご紹介しましょう。

医学
このセクションでは、健康的で明るく、活力あふれる毎日を過ごすためのヒントをご紹介します。例えば、相手に鼻を殴られることなく、マウス・トゥ・マウスの人工呼吸をする方法を知りたくありませんか?不要になった盲腸を自分で切除する方法もお教えします。おいしいキノコと楽しいキノコ(食用キノコと、ちょっと変わった「体験」ができるキノコ)の違いもしっかり解説します。ヨガや中国の鍼治療のやり方もお教えします。こうした知識は、終末後の世界で生き延びるためには、確実に役に立つことでしょう。(もちろん、医療保険が高額な現代社会では言うまでもなく役に立ちます。)ギプスの石膏や接着剤、ペニシリンをそれぞれ一から作る方法、あるいはこれらを同時に作る方法も詳しく説明します。

基本的な素材
世界は巨大な化学実験室であり、ここでの唯一の制約はあなたが知識不足なことだけです。足元に砂があれば、ガラスが作れます。周りに木があれば、紙作りまであと一歩。私たちの文明の魔法ともいえる電気も、手に入りやすい素材から生み出せます。作り方はいろいろありますが、その中でも特に独創的な方法をお伝えしましょう。

工業機械
研究者によると、人間の脳の進化は、常に「怠けたい」「もっと欲しい」という欲望に突き動かされてきたそうです。できるだけラクして、たくさん手に入れたい——それこそが、私たちを天才にした理由です。製粉機や水くみポンプが、あなたの代わりに働いてくれます。燃焼機関があれば、どこまでも旅に出られます。箱と感光紙で作ったカメラがあれば、あなたの偉業をしっかり記録してくれます。

軍事技術
この本が出版される多元的宇宙のどの世界でも、「人を殺すのは良くない」というのが私たちの共通認識です。こんな発明、できれば世の中に存在しない方が良かったと思ったとしても……投石機の性能の素晴らしさは否定できません。火薬の主成分となる硝石を作るには、干し草と人間の尿があれば十分です。干し草の山にどのくらい尿をかけ続ければよいのでしょうか?その答えは「究極の文明再構築ガイド」に書いてあります。ところで、火薬を発見した錬金術師は、本気で「不老不死の霊薬」を作っているつもりだったとご存じでしたか?まあ、火薬がたっぷり入った壺を敵に向かって投げれば、(少なくともしばらくの間は)不死身になれるかもしれませんが。

暖炉と家屋
人類最初の暮らしは、火から始まりました。ご先祖さまよりも無知でいたくなければ、火打石と火打ち金の使い方くらいは覚えておきましょう。順調にいけば、丸太小屋を建てたり、絨毯を織ったり、粘土で日用品を作ったり、船を建造したりできるようになります。さまざまな紐の結び方や、天然染料の使い方も学べます。しかし、何より重要なのは、ネズミが絶対に逃げ出せない高性能ネズミ捕り器の作り方です。(もしそれに失敗したら、農業セクションにある「猫の飼いならし方」をご覧ください。)

農業
人間が小麦を栽培できるようにしたのではなく、小麦が人間を「定住化」させたのだという説があります。農業は、今の私たちを形づくった重要な営みです。この本では、さまざまな穀物の種類や、動物の飼育に関する基本的な知識について詳しく紹介しています。漁網の作り方、子牛の出産の手助け、塩やハチミツの調達方法まで、実用的な知恵も学べます。でもその前に、ぜひ世界最高の小麦ビールの醸造方法を学んでおきましょう(文明崩壊後の世界では、あなたは唯一のビール職人なので、文字通りそれが世界一のビールになるのですから)。

エンターテイメント
生き延びることだけが人生ではありません。退屈で死なないことも大切です。トランプやチェスがあれば、サバイバル生活での人々の諍いも減るはずです。子どもが家に火をつける心配もありません(家の作り方は「暖炉と家屋」セクションを参照)。ボール遊びや凧揚げに夢中になるので、そんな暇はないはずです。フェナキスティスコープという、動きの錯覚を生み出す装置を作れば、地元の映画王にだってなれます。ちなみに!振動器の作り方もちゃんとご紹介します。

楽器
オーストラリアのディジュリドゥに似た音を出せる楽器は他にありません。まさに精霊の声そのものです。この楽器は多元的宇宙のあらゆる世界に存在します。作り方のマニュアルを、ぜひチェックしておいてください。同じことが口琴にも当てはまります。口琴は地球やそれ以外のあらゆる文明の歴史に登場します。さらに、異世界間を旅するときには、シタールや鈴がとても役に立つはずです。異世界のどこかで誰かに出会ったら、ぜひ私たちの世界の音楽理論について教えてあげてください。そして、その世界の人たちの楽譜について聞くのもお忘れなく。

社会
儀式や伝統、礼儀作法は、道具や素材と同じくらい重要なものです。人間のコミュニケーションに関する、最も基本的かつ不思議な発明の数々が、「究極の文明再構築ガイド」にまとめられています。良い印象を与えるためのネクタイの結び方とは?ファッションの背景にある哲学とは?テーブルセッティングのルールや道路標識の付け方とは?そして、見る人に最も強烈な印象を残す切腹の作法とは、一体どのようなものなのでしょうか?

ゲーム
オランダの哲学者ヨハン・ホイジンガは、その著書「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」の中で、ゲームは人間が文化を持つはるか以前から存在していたことを示しています。人々はゲームを楽しみ、何千年もの間に無数のゲームを考え出してきました。多くのゲームは、実は秘められた知識を含んでいます。例えば、トランプの絵柄は人間の心理の原型を象徴し、チェスの駒は社会構造や階級を表しています。サッカーやモノポリーといった人類を代表するゲームの仕組みやルールを理解すれば、世界を支配することだって夢ではないのです。

デリカテッセン
人類がまだ文字を発明していなかった頃、人々は肉を生で食べるより焼いたほうがずっとおいしいことや、果汁を発酵させた飲み物が悲しみを和らげ、赤ちゃんのようにぐっすり眠れることを発見していました。やがて料理は、想像力や創意工夫を必要とする真の芸術へと進化しました。アジアの人々は、生魚を何週間も押し型に入れておくことで「寿司」を作り上げました。アラブの遊牧民は、羊の胃袋で作った袋にミルクを保存しておくうちに、偶然にもチーズを作り出す方法を見つけました。もちろん、人類の代表的な食の発明品である「パン」の作り方を学ぶことも忘れてはいけません。パンがなければ、新しく築くあなたの世界を真の文明にすることはできないのですから。
「THE BOOK」が特別なのはなぜでしょう?
設計図と中世の絵画を組み合わせたような魅力的なイラストは、多元的宇宙に広がるさまざまな世界に存在する多様な形態の装置や素材の構造を鮮やかに描き出しています。それは何を意味するのでしょうか?「究極の文明再構築ガイド」によれば、人々は新しいアイデアを一から「生み出す」のではなく、世界に広がる情報の海から「見つけ出している」のだそうです。つまり、こうしたアイデアが生まれるのに、特定の背景や理由は必要ないということなのです。アイデアは多元的宇宙のどこかの世界で、まるでひらめきのように、突然現れることもあるのです。
